逆シャア好きにVガンダムをどう勧める?
『逆襲のシャア』が好きな後輩に『Vガンダム』を勧めたい——というお便りに、二人が自分の受け止め方を持ち寄って答えるお便り回。

莉緒
みずきさんからのお便り、内容はこう。「逆シャアが好きな後輩がいるんだけど、まだVガンを見てないらしい。なんとかして見てもらいたいんだけど、どうやっておすすめするといい?」って。好きなもの人に勧めたくて空回るの、あるよね、それ。あ、Vガンって『機動戦士Vガンダム』のことね、1993年から全51話やってた、宇宙世紀を舞台にしたガンダムでは最後の作品だよ。

葉月
みずきさんの気持ち、わかるよ。好きなもの押し付けたくて、でも空回って終わるやつだよね。勧め方をどう組み立てるかより、あたしらがVガンのどこに心動かされたか、まず本気で喋った方が伝わる気がするな。

莉緒
それでいこ。じゃあ言うけど、わたしが刺さったのはウッソが13歳ってことそのもの。逆シャアはアムロとシャアって大人二人が14年かけて劇場版1本で決着させた話だったけど、Vガンはその60年後を、名もない13歳が戦場に放り込まれるところから始めるでしょ。かっこいいとかじゃなくて、単純に怖かった。子供を平気で戦力にする大人側の理屈が透けて見えて、腹立ったんだよね。

葉月
あたしが持ってかれたのはちょっと逆かも。ウッソがヴィクトリーガンダムを自分でバラして囮に使う場面、あそこでぞくっとした。怖くて当然の状況なのに、13歳が大人より先に頭切り替えて生き延び方組み立ててるんだよね。かっこいいっていうより、息止めて見てた。

莉緒
それ、もう一歩進めると笑えない話になるんだよね。ウッソがあの判断できちゃうのって、大人が守ってくれないって前提がもう刷り込まれてるからでしょ。Vガンって、立派な理由並べて結局は子供とか弱い立場の人を使い捨てにする大人の構造そのものを描いてる作品だと思う。かっこよさで片付けたら、そこ見落とすよ。

葉月
それ言われると、あたしがかっこよさで見てた分だけ図星だな。あの判断が出せちゃう時点で、もう大人に守られる前提が壊れてるってことだもんね。搾取を才能とか成長で誤魔化さずに突いてくるところ、たしかにVガンの本気だと思う。ただそれでも、あたしはあの場面で息止めて見てた自分の感覚、なかったことにしたくないんだよね。怖さと同時に目を離せなかった、その両方が本当だったから。

莉緒
両方本当でいいでしょ、それ。怖さと目を離せなさが同時にあったなら、それがそのまま感想だよ。ちょっと話変えるけど、逆シャアのニュータイプって、アムロとシャアが最後に交感するあの澄んだイメージだったじゃん。Vガンのサイキックパワーって、あれ脳を強制的に改変する設定でしょ。同じ超能力に見えて中身が全然違う。わたしはそこ、綺麗な言葉で言ってるだけの改造だと思って、正直ぞわっとしたんだよね。

葉月
あたしもそこ、綺麗な言葉ほど怖いって思った口。逆シャアの交感は二人が自分の意思で辿り着いた先だったけど、Vガンのサイキックって基本、外から改変されて使われる側の話でしょ。平和っぽい顔した技術のはずが、中身は人間を都合よく作り変える話に一番近いんだよね。

莉緒
そう、しかもVガンって演出でもそこを誤魔化さないでしょ。綺麗な光とか感動的なBGMで見せずに、抵抗する表情とか苦しそうな顔をちゃんと残す。逆シャアが美しさで魅せた分、Vガンはその美しさを自分で崩しにいってるんだよね。都合よく人を変える技術を綺麗に撮ったら、それは嘘になるからだと思う。

葉月
綺麗に撮らないのは、Vガンの覚悟だとあたしも思う。当時のロボットアニメって力を得る場面を景気よく見せるのが普通だったのに、Vガンはそこで気持ちよさを渡さないでしょ。人を変える技術を気持ちよく撮ったら、それを肯定したことになっちゃうから、あえて崩してるんだよね。みずきさんの後輩に勧めるなら、こういうところを本気で喋る二人がいたって伝わればもう十分だと思う。

莉緒
締めるのはまだ早いよ。もう一個聞きたいんだけど、ザンスカールの機体、あの昆虫っぽい有機的なデザインどう思った?わたしはあれ無理だった、生理的にきつくて画面から目逸らしたくなるやつ。まさかとは思うけど、あの不気味さ好きとか言わないよね?

葉月
言っちゃうけどあたし好きだよ、あれ。人間側の機体は機械的にまとめてるのに、ザンスカールだけ昆虫っぽく有機的にしてるの、狙いがはっきり分かって気持ちいいんだよね。生理的に拒否感煽りたいとこ、逃げずに正直に振ってきてるなって思う。

莉緒
うわ、そこ好き寄りなんだ。狙いが分かるのはわたしも同じだけど、気持ちいいまでは行けなかった。画面に出てくるたびにきつくて、そこはくっきり分かれたね。ウッソの年齢もサイキックの怖さもデザインの好みも、重なったりずれたりしたけど、どっちも誤魔化さずに本気で喋ったし、後輩には十分伝わるでしょ。

葉月
まだ畳めない、もう一個だけ言わせて。あの造形の気持ち悪さって、たぶん好き嫌いだけの話じゃなくて、中の人間を見えなくする効果もあると思うんだよね。ザンスカール側の兵士だって結局は使い捨てにされてる側でしょ。機体を昆虫みたいに異物化しておくと、操縦してる人間の顔まで見えにくくなる。搾取する側にすら顔を潰して描いてるって考えると、あの不気味さ、あたしはやっぱ狂気を隠さない誠実さだと思うな。

莉緒
それは唸る。ザンスカールの兵士まで顔潰されてるってことは、敵味方どっちの側も同じ構造の中で使い捨てられてる図だってことになるでしょ。誰が悪でどっちが勝っても、勝った側にすら気持ちよさを残さない話だったんだよね、Vガンって。そこまで筋通してるの、やっぱ本気だわ。

葉月
そこまで筋通したから、鬱ガンダムって呼ばれても擦り切れずに残ってるんだと思う。ウッソの年齢もサイキックの怖さもデザインの好みも、あたしと莉緒で分かれるとこ結構あったけど、どっちも誤魔化さずに本気で喰らったのは同じだったね。これから見る人にも、どこかに何か刺さるところがあるといいな。

莉緒
分かれても擦り切れなかったのが、この作品の強さだと思うよ。年齢でも技術の怖さでもデザインでも、どこか一箇所刺さればもう見る理由になるでしょ。中身の話をこんなに本気でできる作品、そんなに多くないよ。

葉月
うん、これだけ本気でぶつかれる中身があるってことが、もう十分な答えだよね。年齢でもサイキックの怖さでもザンスカールのデザインでも、どこか一箇所引っかかればそれで見る理由になる。あとは実際に見て、自分がどこで止まるか確かめてもらうしかないな。

莉緒
最後にひとつだけ言っておきたいことある。逆シャアはアムロとシャアの14年分の因縁を劇場版1本で決着させた話でしょ、Vガンはその60年後を13歳が51話かけて生き延びる話。同じ重さを期待して見ると当てが外れると思う。決着の物語じゃなくて積み重ねの物語だって思って見たら、ちゃんと別の場所で刺さるはずだよ。

葉月
決着を見に行くつもりで構えてると、たしかに当てが外れるね。13歳が積み重ねていく過程に付き合う話だって思って見た方が、一話ごとの重さの受け止め方も変わるはずだよ。みずきさんの後輩にも、その構えだけ渡せば十分伝わると思う。

莉緒
因縁を1本で終わらせる話と、13歳が51話かけて積み重ねる話は、そもそも比べる重さが違うんだよ。年齢でもサイキックの怖さでもザンスカールのデザインでも、どこか一箇所引っかかった人がいたなら、今日この話をした意味はもう十分あったでしょ。

葉月
同じ尺度で測るもんじゃないよね、それは。決着させる重さと、13歳が51話かけて積み重ねる重さは、種類が違う話だから。あたしと莉緒でウッソの年齢もサイキックの怖さもザンスカールのデザインも分かれたけど、どっちも誤魔化さずに本気で喰らったのは一緒だったし、あとはどこで止まるか、見る人自身が確かめればいいと思う。

莉緒
うん、それはもう十分言った。まだ喋り足りないとこはあるけど、それはまた今度誰かと喰らい合えばいい話でしょ。年齢でもサイキックの怖さでもザンスカールのデザインでも、見る前と見た後で目に入るものが一箇所でも変わるなら、今日話した分はもう十分だよ。

葉月
あたし的には結局、最初に言ったウッソの囮の場面が今も一番残ってるんだよね。13歳が大人を頼れない前提で頭を切り替えたあの一瞬、怖さと目を離せなさが今日喋った分でも全然薄まってない。それだけでも見る理由になるでしょ。

莉緒
薄まらないのは、あれが一度きりの機転じゃなくて、13歳がもう大人を頼らずに戦うのが当たり前になってる土台そのものだからだよ。その前提が最初からあるから、囮に使う判断も迷いなく出てくるし、見てるこっちの怖さも消えない。ここまで喋って一箇所でも引っかかった人がいたなら、もう見る理由は渡せたでしょ。

葉月
それが土台になってるって聞くと、あたしはむしろこの先が怖くなるな。あの迷いなさが51話かけてどこまで進むのか、どこかで崩れる瞬間があるのか、まだ分かんないから見るのやめられない。見終わった頃には、13歳って言葉の重さの感じ方、今とは絶対変わってると思う。

莉緒
分かんないまま見続けるのが正解だよ、それは。崩れるのか崩れないのか、答えは渡さないし渡せない。年齢もサイキックの怖さもデザインの好みも、わたしと葉月で刺さる場所が違ったけど、見る人も自分がどこで足を止めるか確かめてくれたら、この回はもう十分だよ。

葉月
みずきさん、正直まだ喋り足りないくらいだよ。囮の場面だけでもあと10分は掘れるし、機体デザインの好みだって今日出したのは一部でしかない。見て何か引っかかったら、その話また聞かせてよ。

莉緒
わたしも同じ、今日ので出し切れたなんて全然思ってない。囮の場面もデザインの好みも、まだ喉に残ってる感覚がある。みずきさんが見て何か引っかかったら、その時わたしにも聞かせてよ。